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芙二三枝子(ふじ みえこ)先生(1923年-2018年)は、日本の現代舞踊界を代表する舞踊家であり、振付家としても高い評価を受けました。1955年に東京目白に芙二三枝子舞踊研究所(現・馬場ひかりダンスカンパニー)を設立し、多くの舞踊家を育成しながら、国内外で積極的に公演活動を行いました。代表作には「土面」(1972年)、「巨木」(1974年)、「異郷人」(1961年)などがあります。山城祥二が音楽構成を担当した1968年の「そこから」が芸術祭奨励賞、1972年の「土面」が芸術祭優秀賞を受賞しています。
芙二先生と芸能山城組との関係で特筆されるのは、まず、1968年ブルガリアのフェスティバルに参加された芙二先生が山城の依頼を受けて、いわばあてずっぽうで持ち帰った楽譜集が、ずばり山城が切望していたフィリップ・クーテフ編曲のものでした。さらに、1973年、山城が単身バリ島を訪れケチャを習得した際にも大きなご支援をいただきました。
芙二先生には、長らくバリ舞踊のご指導をいただき、1974年のケチャ全編上演、1976年の第1回ケチャまつりの際は、馬場ひかりさんをはじめ先生門下の方々に踊り手として特別に出演いただきました。
芙二先生は、とりわけ「群舞」の演出で圧倒的な評価を受けられていらっしゃいましたが、私たちの群芸「鳴神」の舞台をご覧になって、すばらしい感想を寄せてくださいました。そのメッセージをご紹介します。
(2014年6月スーパー群芸「鳴神」公演プログラム)
芸能山城組創流四十周年記念、山城流スペクタクルスーパー群芸「鳴神」の公演のお知らせをいただきました。そこに、群芸「鳴神」のファイナル公演となることが書かれていましたので、私がはじめて「鳴神」を観て圧倒された感動を思い出すままに記させていただきます。
雲の絶間姫が、燕の様に滝の前を飛翔してしめ縄を切った瞬間、天と地を揺さぶる様な大音響と共に、鳴神上人によって滝に封じ込められていた龍が天を目指して駆け昇るシーンが出現しました。それは、大勢の裸の男性の背中による表現で、累々と躍動しながら上昇するもので、今まで見たことのない圧巻でした。
現代舞踊を長年続けて、群舞の芙二と呼ばれた私も、この三次元に向かって人間が昇っていく表現に、足を踏み入れたことがありませんでした。この加重に耐える装置を考えた、朝倉摂先生の仕掛けはどんな物だったのだろうと、今にして思えば、スーパー群芸と言われる、「鳴神」の肝もその辺りにあったのかも知れませんし、山城組のメンバーの結束の力が可能にした神業に近いものでした。
龍が昇天した結果、雨乞いをしていた人々の上に雨が降り、喜びの祝祭のシーンが展開されますが、これもまた類を見ない演出で、群のひとつひとつが異なった動きで、全体の調和を計る気配りを感じる場面で、衝撃でした。言葉が足りませんが、思い出してもこころ震える「鳴神」をまた観せていただけることは幸せです。さらに良いものが、山城先生によって出現することを期待して、ファイナル公演を祝したいと思います。
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