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研究調査

Ⅱ. 研究ハイライト

Research Highlights

4.ハイパーソニック・セラピーの開発

 ハイパーソニック・エフェクトは、超高周波を豊富に含む音によって基幹脳が活性化される現象ですが、この発見は、見る角度を変えると全く異なる様相を呈します。人類が大型霊長類の祖先以来2000万年近くを過ごしてきた熱帯雨林の自然環境には、ハイパーソニック・エフェクトを引き起こす耳に聞こえない超高周波が豊かに含まれています。言い換えると、人類の遺伝子は、超高周波が満ちあふれた環境の中で最も快適にストレスなく生きられるよう、その環境に合わせて進化してきたのです。つまり、私たち人類にとっては、超高周波が満ちあふれた環境こそが「デフォールト(本来)」の状態だと言えます。一方、現代人の多くが暮らしている都市の環境音には、超高周波はほとんど含まれていません。つまり、現代都市は人類本来の情報環境から大きく逸脱し、その結果、基幹脳の活性が低下して、意識・無意識を問わず大きな情報ストレスを招いている疑いを否定することができません。こうした基幹脳の衰えは、認知症、うつ病、依存症、発達障害などさまざまな精神と行動の異常だけでなく、生活習慣病やガンなど身体の病とも密接な関係をもっていることが判ってきました。
 そこで私たちは、ハイパーソニック・エフェクトを応用して、現代都市に欠乏している超高周波を補充して人類本来の音環境を再構築することにより、心と身体のさまざまな病の治療と予防に結びつけることができるのではないかと考え、「ハイパーソニック・セラピー」の開発に取り組んでいます。

 まず、長期間にわたって熱帯雨林自然環境音を聴かせた場合の健康に対する効果と安全性をマウスを使った動物実験により検証しました。この実験では、採血や遺伝子検査などマウスにストレスを与えるような検査は一切行わず、総合的な健康指標として、もっとも単純な寿命を計測しました。その結果、それぞれ32匹ずつのマウスに、超高周波を豊富に含む自然環境音を聴かせながら飼育した場合には、自然環境音を聴かせずに飼育した場合と比較して、平均寿命が17%延長することが明らかになりました。これは人間の平均寿命80歳に換算すると13歳の寿命延長に相当しますので、かなり顕著な寿命延長効果と言えます。しかも、二つのグループで、最も長く生きたマウス個体の寿命はほとんど変わりません。つまり不老不死のマウスができたわけではないのです。自然環境音なしで飼育した場合には、早くから弱いマウスが死んでいくのに対して、自然環境音を流しながら飼育すると、多くのマウスはある時期まで揃って健康に生きていて、その時期を迎えると枯れ木が折れるようにパタパタと死んでいくことがわかりました。つまり健康寿命が延長したと言えるでしょう。

 次に現代人を苦しめる生活習慣病の一つ、糖尿病に対する新しい治療法を開発するために、ハイパーソニック・エフェクトがそれを聞いている人の血糖値におよぼす効果を調べました。糖尿病の厳密な診断のために、経口ブドウ糖負荷試験という検査が広く行われています。これは、75グラムのブドウ糖を含んだサイダーを一気に飲み、その後2時間の血糖値の変化を測る検査です。この検査で、血糖値が上がり過ぎたり、なかなか元の値に下がらないと糖尿病の疑い有りと診断されます。この検査を行う時に、超高周波を豊富に含む熱帯雨林自然環境音を流していると、超高周波を含まない自然環境音を流した時や、音がない状態で検査を行った時と比べて、血糖値の上昇が最大25%も抑えられることを私たちは明らかにしました。しかも、こうした血糖上昇抑制効果は、年齢が高かったり、普段の血糖値が高いなど、糖尿病になるリスクの高い人だけに見られたのです。血糖値を下げる薬としては、インスリンが有名です。この薬を間違って健康な人に投与すると、血糖値が下がりすぎて大変危険な状態を引き起こします。私たちの考えるハイパーソニック・セラピーの効果は、こうした副作用の危険と切り離すことのできない薬物療法とは全く異なる原理に基づくものと考えられます。
 さらにパイロット研究によって、認知症の介護をするうえで最も大きな問題になる行動・心理症状を改善する効果も示されていて、現在、大規模な臨床研究に取り組んでいるところです。その他、依存症、うつ病、依存症、高血圧症などに対する研究を進めています。

主な発表論文

  • Induction of prolonged natural lifespans in mice exposed to acoustic environmental enrichment. Yamashita, et al., Sci Rep 8:7909, 2018.
  • Positive effect of inaudible high-frequency components of sounds on glucose tolerance: a quasi-experimental crossover study. Kawai, et al., Sci Rep 12: 18463, 2022.
  • Non-pharmacological therapy for behavior and psychological symptoms of dementia (BPSD) utilizing the hypersonic effect: A pilot study. Honda M, et al. Journal of the Neurological Sciences 381, 661–662, 2017.