Ⅱ. 研究ハイライト
Research Highlights
5.「多芸に通じる」メタファンクショナル・アプローチの検証
スポーツトレーニングでは、例えばフォアハンドを100回、その後バックハンドを100回、というように運動パターンごとに分けてそれぞれを集中的に練習するのが一般的です。ところが、さまざまな新しい状況で運動を学習させる行動実験を通じて、このような一点集中のブロック型の反復訓練では、すぐに学習効果があらわれるものの、別の学習をおこなうことによって以前に学習した能力が簡単に失われてしまうのに対して、複数のパターンを時間的にランダムに混ぜて同時に訓練すると、上達は遅いけれども複数の技能がよく記憶に残り、最終的な学習効果が高まることを発見しました。これは、単機能専門型の能力開発の限界とメタファンクショナルな能力開発の有効性を実験的に証明したものであり、文明科学研究所の重要な能力開発戦略のひとつであるメタファンクショナル・アプローチが、人間のハードウェアとしての脳との適合性が高いやり方であることを示しています。

主な発表論文
- Osu R, Hirai S, Yoshioka T, Kawato M (2004) Random presentation enables subjects to adapt to two opposing forces on the hand. Nature Neuroscience, 7:111-112.